海外赴任を打診されたときに検討すべきこと(中国コロナ禍編)

自分の事例

私自身がコロナ禍における中国赴任の件で、勤めていた会社を辞めて転職することになったので
世の中の方が同様のトラブルを繰り返さないようにと思い、記事にしました。

元いた会社にネガティブな気持ちはなく前向きに転職に踏み切れたと思うので、
会社に迷惑が掛からないように固有名詞は伏せさせていただきます。

私は大手電機メーカでソフトウェアエンジニアとして働いていましたが、
2021年1月に上司から中国赴任の打診を受けました。

これまで海外赴任経験はなく、何を検討したらよいものかと悩みましたが、
社内の海外赴任ガイドブックを読んで会社から適度な支援を受けられそうだと思ったので前向きに受けることにしました。

新婚ホヤホヤだったので「これから子作りも頑張ろう」という話を妻としていたところで、
家族帯同が前提であることを会社へも事前に説明し、会社の窓口である上司も承諾していました。

誤算

自分は海外勤務経験がなく、また上司も経験がなく、海外勤務の基本的な事柄で分かっていないことがありました。

駐在者本人と、その家族はビザの種類が異なる

中国はもちろん、中国以外の国でも一般的にそうであることが多いです。
駐在者本人と、その家族ではビザの種類が異なります。つまり、ビザの発給条件が異なる可能性があります。

中国を例にすると、駐在者本人はZビザですが、その帯同家族はSビザになります。
そしてコロナ禍以降、中国ではZビザは発給されていますが、Sビザの発給は止まっています。
2021年6月現在の情報。最新情報を必ずご自身で調査ください。中国製ワクチンを接種済であれば発給可能という噂もありますが、日本では未承認薬のため接種できないようです)。

これに早い段階で気づいていれば転職するほど大きな話にはならずに済んだと思うのですが、
不幸なことに自身も上司もこのあたり、まったく無知でした。

上司は海外赴任の実態をよく分かっていない

上司を責めるつもりはありません(というか、責めても建設的でない)。全ての管理職が海外赴任を経験することは不可能だからです。
ただ、海外赴任の私生活含めた現実は、実際に赴任した人間でしか分からないことが多いです。

例えば、海外赴任時には以下の様な面倒ごとがあります。

  • 住宅の解約・処分
  • 車の売却
  • 冷蔵庫や洗濯機などの家具を実家、または契約したロッカーなどに置く
  • 帯同する妻が働いていれば、仕事を辞めてもらう(引継ぎ期間も必要)
  • 一時帰国の条件
  • 現地出向先での休暇取得条件
  • (子供がいる場合は)現地での教育機関が確保できるか

赴任の打診の段階では、直属の上司が会社側の窓口になるのが普通だと思います。
上司が海外赴任経験があるか否かは、上司本人にはっきりと聞いたほうが良いと思います。
そして、上司が海外赴任経験がないのであれば、上司の言うことはあまり信用せず、人事部門や労務部門に自ら問い合わせて正確な情報を得る必要があります。

また、任期が何年以下の場合は家族帯同NGなどの条件があったりもします(家族帯同は会社にとってはコストだからです)。
このあたり、自分の家族を守るためにも、曖昧なまま進めてはいけませんし、適当にYESと言ってはいけません。

海外赴任条件で自分にとって大切な事柄については、会社側との会話記録(テキスト)を残しておいたほうが良いと思います。

教訓

とにもかくにも、上司の発言を安易に信用してしまったのが最大のミスだったと思います。

上司は、部下の仕事を管理する義務はあっても、部下の家庭まで思案する義務は基本的にありません。結局は仕事上の利害関係のみで繋がっている関係です。
自分の私生活について真剣に思案できるのは自分だけ。自分の大切なものは自分で守る。そんなプロとして当たり前の意識が、いつの間にか曖昧になっていたのが問題でした。

今後気を付けるべき教訓を簡単にまとめると以下になります。

  1. 転勤・赴任の打診はいつ来るか分からない。いつ来ても落ち着いて対応できるように社内ルールを(話が来る前から)調べて理解しておく。
  2. 打診に対して適当な返事をしない。
    • 一般に、転勤・赴任は会社にとってもコストである。(会社にもよるが)人材育成の一環としてわざわざお金をかけている一面がある。
    • したがって、転勤・赴任の打診が来るということは、育成対象として評価されているということ。
    • 無理な転勤で従業員が会社を辞めたら会社も損。
    • よって、まともな会社であれば交渉する余地はある。
  3. ビザの発給条件の詳細は赴任国によって異なるので必ず調査する。
  4. 内示・辞令が出た後で話を撤回することは極めて難しいので、打診の段階で徹底的に検討必要。
  5. 上司の社内ルールに関する理解度が低いと感じたら信用しない。社内のスタッフ部門への確認を怠らない。

自分の場合の結論

自分の場合、帯同家族(妻)のビザ発給が中国当局の規制で止まっていることに気付いたのは辞令が出た後でした。
当然上司に話をし、会社側と赴任条件について交渉しましたが、望ましい回答は得られませんでした。
ただ家族と離れる単身赴任をしている人は社内に多数いるので、一人だけ特例を認めることは難しいのも理解できます。

今後中国当局の規制がどうなるかは自分では一切コントロールできない事柄であること、
人生を長い目で見れば海外赴任よりも、今しかできない家庭の物事の方が大切であること、
ソフトウェアエンジニアという比較的転職しやすい職種だったこと、の3点から転職を決めました。
(幸い、転職活動を開始して1か月ちょっとでスパっと決まりました)

おわりに

今回は転職という結果になりましたが、本来は打診を受けた段階で問題・リスクを漏れなく把握し、
よく検討したうえで回答できるのが一番です。
今回の私のケースが他の方のトラブル未然防止に役立てば、幸いです。

また、Twitterで”中国帯同”などで検索すると
中国ビザ(招聘状)の問題で離れ離れになってしまった家族の方が多数いらっしゃることが分かります。
一刻も早くこの状況が解決されることを祈っています。

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